寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「それは……理玖さんに言いたいことがあって……」
「俺に言いたいこと?」
彼が私を引き離す。
「琢磨さんに言われてしまいました。理玖さんがひとりでミヤコに立ち向かっているっていうのに、当事者の私が逃げたままってのはどういうことだって」
「……琢磨がそんなことを?」
理玖さんは、それが意外だというような顔をした。
「私、怖くて逃げたんです。何百人もの社員の職を奪う犯人になりたくないから。理玖さんは『俺を信じろ。心配するな』って何度も言ってくれたのに……」
私が逃げている間、理玖さんはひとり遠く離れた土地で奮闘していたというのに。
「大切な人の言葉に耳を貸そうともしなかった。理玖さんはもう私なんて必要ないかもしれません。でも、自分の気持ちだけは……意思だけは理玖さんにしっかり伝えたかったんです」
今夜ここで決定的な別れを告げられることになったとしても。