寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

彼を真っ直ぐに見上げる。
思えば、こんなにきちんと彼の目を見つめたことはなかった気がする。
いつも理玖さんの輝くほどの強い眼差しが眩しくて、逸らしてばかりいたから。


「理玖さん、私はあなたが大好きです」


身分違いだとわかっていながら、募る想いはどうにも止められなかった。
いつか理玖さんに相応しい人が現れたときには、潔く身を引かなければならないと覚悟もしてきた。
それでもやっぱり私は……。


「理玖さんを愛して――」


全てを言い終わる前に、言葉は彼の唇に飲み込まれた。
理玖さんの腕がきつく私を抱きしめる。


「茜……ありがとう」


腕の中で首を横に振る。


「いろんなことが片づいたら、茜を迎えに行こうと思っていたんだ。会社のことがはっきりしない限り、キミはきっと俺の元へは戻らないだろうからね。だから今日、茜がオフィスにいたときには幻かと思ったくらいだ」

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