寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「よかった……。もうオリオンコミュニケーションズは大丈夫なんですよね?」


理玖さんは「ああ」と頷いたあと、「ほら」と自分のうしろを指差す。
そこには、今まで見たこともない絶景が広がっていた。

星屑を散りばめたようなマンハッタンの夜景は、一瞬にして私の心を奪った。
無意識に窓に近づいた私の肩を理玖さんが抱く。


「真っ直ぐ目の前に見えるのがエンパイアステートビルで、その奥がタイムズスクエアやクライスラービル」


圧巻の景色は、私から言葉まで奪った。
そういえば以前、理玖さんは『ニューヨークの景色はもっと格別だ』と言っていたことを思い出す。


「……でも、どうして私たちのほかに誰もいないんですか?」


エレベーターに乗ってからここまで、誰ひとりとも会わなかった。
こんなに素敵な夜景が見られる展望台なら、人で溢れていて当然だろうに。


「貸し切りにしたからだ」

「……貸し切り?」

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