寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「そんなの兄貴が後づけした理由だから」

「いつまでも拗ねていらっしゃると、副社長としての風格が損なわれます」


沙智さんにピシャリと言われて琢磨さんはたじたじといった様子だった。

なんにせよ、今回のことで私は琢磨さんには頭が上がらない。
私はきっと、琢磨さんが電話を掛けてきてくれなければ、自分から行動には移せなかった。いつまでも理玖さんに背を向けていただろう。
結果、彼の迎えを待つような形に。

それじゃだめなのだ。
今までの自分を変えるなら、これまでと同じ行動を取っていたのでは始まらない。
琢磨さんが背中を押してくれたから、私は理玖さんをニューヨークに迎えに行くことができたのだから。


「琢磨さん、本当にありがとうございました。感謝の言葉以外にありません」


心を込めて言うと、それでやっと気が済んだのか、琢磨さんは「まあ、もう済んだことだしいいけどさ」と態度をあっさり軟化してくれた。


「茜になにか話があるときは、まず俺を通せ」

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