寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「俺になにか言うことない?」


理玖さんを横から見上げると、ハッと気づいたように顔つきが変わった。


「琢磨、今回ばかりは礼を言うよ。本当にありがとう」


手を両脇に揃え、理玖さんは丁寧に頭を下げた。
それを見て、私もあとに続く。


「“今回ばかり”ってところが気になるけど、まぁいいか」

「どのみち茜のことはいろんなことが片づいたら迎えに行こうと思っていたから、琢磨のやったことは勇み足だといえばそれまでだが」


琢磨さんの軽口にカチンときたのか、律儀にお礼を言ったそばから理玖さんがチクリと釘を刺す。


「兄貴はなにもわかっちゃいないな。茜ちゃんが自分の意志で行くことに大きな意味があるんじゃないか」


琢磨さんも負けてない。
でも、それは本当にそのとおりなのだ。
理玖さんもさすがに「そうだな」と納得したようだった。

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