寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

風見さんは確かに“一緒に住まないか”と言った。

耳に神経を集中させ唇の動きもよく観察した。それでもそう聞こえたということは、本当に一緒に住もうと言ったのだろう。
そうでなかったら、勝手に言葉を変換してしまうのだから、私の脳みそはよっぽど性能が悪いのかもしれない。


「実は、今朝作ってもらったちくわ丼。あの味がどうにも忘れられなくてね」


あのちくわ丼の味が?
あんな安っぽい料理が?
そんなの嘘でしょう……?

風見さんは思い出すかのように目を遠くへと向けた。


「だから一緒に暮らして、俺の食事を作ってもらいたい」


私の顔が疑惑に満ちていることに気づいたのか、風見さんがはっとしたように目を見張る。そしてナイフとフォークを置き、テーブルの上に身を乗り出すようにした。


「あまり贅沢をできない生活だと言っていただろう?」


探るように向けられた流し目に意図せずドキッとする。

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