寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「……はい、就活中のフリーターなので」
「一緒に暮らせば家賃も水道光熱費も必要なくなる。俺の食事の面倒をみてくれるのであれば、食費の心配をすることもない」
「え……?」
家賃も水道光熱費もタダ?
おまけに食費まで……?
おいしすぎる信じられない提案を聞いて、ついお尻を浮かせる。背筋がすっと伸び、風見さんの話をもっとよく聞こうと私も前のめりになった。
「でもどうしてそんなことを……?」
「大学を卒業してからずっとアメリカ暮らしだったんだ。半年前に急きょ日本に呼び戻されて。向こうでの食生活はひどいものでね」
「ですが、私の料理が風見さんのお口に合うとは思えないのですが」
きっと普段からこういった高級食材を口にしているだろう。安さ第一の料理の味で満足するとは思えない。
「いや、あのちくわ丼は冗談抜きでうまかった」
優美な微笑みでそう言われて嬉しくないはずがない。つい私の顔も綻んでしまう。