寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

高い天井、見るからに高級そうな壺、私の背丈ほどあるフラワーアレンジメントも飾られていた。
絨毯に上る前にパンプスを脱ぎたくなってしまうような内装だ。

シンデレラになった気分。
着ているものも、この場所も、すべてが魔法にかけられたよう。

すでに背中が小さくなった風見さんに小走りで追いつき、周りをキョロキョロとしながら歩く。


「ここだ」


風見さんが立ち止まった。
このドアの前に来るまでに、部屋らしきドアがなかったことを私は思い返していた。
ワンフロアにひと部屋だけなのだとしたら相当な広さだし、最上階ということは一番高級なのかもしれない。
さすがはオリオンコミュニケーションズの社長さん。


「入って」


足を玄関先に踏み入れた途端、私の目に入ってきたのは綺麗に磨き上げられた大理石の床だった。
左手には大きな収納。どれだけ靴を持っているのかと余計なことを考えてしまう。
真正面の壁には両手を広げても届かないくらいの大きな抽象画が掛けられていた。
私の部屋よりも広い玄関だ。

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