寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
そう言って目の前の彼が頭を掻く。
驚いたことには違いないけれど、引っ越ししたばかりなら当然の状況だろう。それに、人様の部屋の状態に私が口出しをするのはお門違いだ。
「いえ、大丈夫です」と動揺を隠して首を横に振った。
「とりあえず座って」
そう言いながら、彼がソファに置かれた洋服類をフローリングへ置く。
そうすることでできたスペースにおずおずと座ると、部屋全体を見渡せて、余計に散らかっているのが目に入った。
この部屋を片づけたい――。
どうにも止まらない衝動が、じりじりと私に迫ってくる。
うずうずとした欲求を抑え込もうとするものの、手を出したくて仕方がない。
「どうかした?」
「……あの、差し出がましいことを言って申し訳ないんですけど」
「なに?」
「部屋を片づけさせていただけないでしょうか?」
風見さんがきょとんとする。