寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「こういう状態を目にすると、いてもたってもいられないんです」
片づけ癖とでも言ったらいいのか、整理整頓が大好きなのだ。
除菌ペーパーをいつも携帯するような潔癖症ではなく、とにかく位置を決めて綺麗に片づけたいのだ。余計なものは全部収納してしまいたい。
引っ込み思案な性格も、そのときばかりは影をひそめた。
「そうしてもらえると助かるけど……いいのか?」
「はい!」
元気よく返事をして立ち上がる。
せめて今いるリビングだけでもなんとかしたかった。
散乱している洋服を畳み、クローゼットへしまうよう彼に手渡す。本は本棚へ、細かいものはありあわせの小さな箱に揃えて入れた。フローリングに並んだ紙袋から中身を出して、それらもあるべき場所へと片づけていく。
そうして二十分ほどで余計なものがなくなり、ようやく私の片づけ癖も落ち着いた。
「驚いた。手際がいいんだな。ますます気に入った」
彼が感心したように部屋を見渡す。
こんなことで褒められたことは今までなく、とてもくすぐったい。
「悪かったな、掃除までさせて。本当なら片づけた上で一緒に住む提案をすべきだったのに」
「いえ、私こそ突然出過ぎたことをして申し訳ありません」
初めて入った部屋、しかも人様の部屋の片づけをしたのはさすがに初めてだったけれど、なんだかとても清々しい気持ちになった。