寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「――きゃっ!」
抱えていた本が散らばるように私の体も床へ一直線。
目をぎゅっと閉じて覚悟を決めたときだった。
「おい! なにやってるんだよ!?」
風見さんの声が聞こえたかと思ったら、私の体を抱え込むように腕が回された。
その直後、背中にフローリングとは違う感触が伝う。風見さんの上に倒れ込んでしまったのだ。
申しわけないと思うのと同時に、思わぬところでがっちりとした胸板と腕の逞しさを感じて心臓がドクンと音を立てる。
「大丈夫か?」
耳に吐息を感じる距離で風見さんに聞かれて、恥ずかしさと緊張に包まれる。
「だ、大丈夫です……」
起きようと無様にもがいていると、風見さんはあっさりと私の背中を押して起こしてくれた。さらに格好がつかない。
「すみませんでした。ありがとうございます」