寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
慌てて正座をして頭を下げる。
「届かないところまで茜が無理してやることはない」
「あ、はい……」
今朝まで“茜さん”だったはずが、突然呼び捨てになったものだから本の整理どころじゃなくなる。
妙に気恥ずかしくて顔が赤くなっていることが自分でもわかった。
「どこか打ったのか?」
「――いえっ」
私のほうが五つも年下なのだから、“さん”付けよりも自然なこと。別に意味はない。
瞬時に納得しながら首を横に振ったところで、床に散らばった本が目に留まる。
「あっ!」
紙がめくれてぐちゃぐちゃだ。
ど、どうしよう……!
手で撫でつけたところで折り目がなくなるわけもない。
「風見さん、ごめんなさい! 本が……」