寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「それを言うなら茜だ」
「……なにがですか?」
なんのことを言っているのかわからずにいると、風見さんは本棚を指差した。
「分類の仕方が見事だ」
「……ありがとうございます!」
嬉しくて心が弾む。
それくらいしか取り柄がないのがつらいところだけど。
「いい特技だな」
風見さんは本棚の前に立ってふっと笑みをこぼした。
照れくさくなりながら散らばった本をまとめていると、なにかがはらりと落ちる。拾い上げてみれば、それは一枚の写真だった。
風見さんとブロンドの髪の女性が肩を寄せ合い幸せそうに笑っている。
綺麗な人……。
その写真に思わず見入っていると、風見さんが不意に私からそれを抜き取った。
「――ご、ごめんなさい」
慌てて謝る。
アクシデントとはいえ食い入るように見てしまったことが恥ずかしい。
「いや」
風見さんは短く答えると、「夕食にしよう」と書斎を先に出て行った。
写真の様子から推測すると、おそらく恋人だろう。お似合いのふたりだった。