寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
お試しの恋人
そうして十日が過ぎたある日のこと。
見覚えのない番号から私のスマホに着信が入った。
誰だろうかと首を傾げながら応答をタップする。
『オリオンコミュニケーションズの人事部長をしております宮原と申します』
――え!? オリオンコミュニケーションズ!?
もしかして風見さんの身になにかあったの?
真っ先に頭に浮かんだのはそれだった。
『……もしもし? 水城茜さんの番号ではないですか?』
「あ、はい! 水城です!」
女性の声に慌てて返事をする。
『先日は当社の試験を受けていただきありがとうございました』
そう言われて思い出した。
そうだ私、中途入社試験を受けたんだ。
そもそも風見さんの身になにかがあったとしても、会社から私に連絡がくるわけがない。
『ぜひ我社で採用したく、ご連絡いたしました』
「はい……?」
まさかの採用通知だった。
最終面接を受けたのは十日も前のこと。
てっきり不採用なのだと思っていた私の衝撃といったらなかった。
しかも風見さんの会社だ。
『早速ですが明日から……』
スマホを耳に当て呆然としながら「はい」を繰り返した。