寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

翌日の朝、朝食のテーブルに着いた風見さんは、私の格好にじっと見入った。


「今日も採用試験か」


黒一色のリクルートスーツを着ていたのだ。
昨日の採用の連絡を風見さんにはなんとなく言えずにいた。

オリオンコミュニケーションズは、日本でトップに君臨するコンサルタント会社。
同じ会社で働くことになるとはいっても、新参者の私が社長の風見さんと顔を合わせるようなことはないだろう。
黙っていてもわからないんじゃないかと思ったから。

風見さんの質問に「はい、そうですね……」と曖昧に返しておいた。

「がんばれよ」という風見さんの応援を申し訳ない思いで聞きながら、彼が出勤するより早くマンションを出る。

外は快晴で、冷たい空気を胸いっぱいに吸うと、寒いのにとっても清々しい。
それもこれもようやく決まった就職先のおかげだろう。

風見さんと出会ってからの私はとても調子がいい。負のスパイラルから脱し、ハッピースパイラルの波に乗れている気がする。

どうしても綻んでしまう頬を引きしめ、駅へと急いだ。

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