寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

オリオンコミュニケーションズへは電車で三駅、駅からは徒歩三分という近さ。マンションからだと時間にして二十分程度だから、とても通いやすい。

辿り着いた地上三十五階建てのオフィスビルの前で立ち止まり見上げる。
このビルの二十五階から三十階がオリオンコミュニケーションズの本社だ。
採用試験で何度か来たことがあるものの、今日の心境はそのときとは全然違う。
晴れ晴れとした気持ちはどうにも隠せず、さっきからニヤニヤが止まらない。
それをどうにかこうにか引きしめ、意気込んでエントランスロビーに立つ。

大きなエキシビジョンモニターには、このビルに入っている名だたる企業の広告が次々と流れている。その隣では、AIロボットがビルの案内をしていた。
受付で人事部長を呼び出してもらい、待つこと数分。


「お待たせいたしました」


現れたのは、くっきり二重の大きな目に小ぶりな鼻をした綺麗な女性だった。
電話で話をした人事部長は男性だったから、この女性とは違う。

歳は多分私より五つくらい上だろう。
高いヒールを差し引いても、百六十センチの私より五センチほど身長が高い。かっちりとした黒いスーツを着ているが、胸元から覗かせるやわらかな素材のブラウスが女性らしさを演出している。

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