寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
それを持っているからといって、すぐに秘書業務をやれるはずがない。それも、風見さんの秘書だなんて。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。兄貴――いや、失礼。社長が――」
「兄貴……?」
私がポツリと呟いた言葉を副社長が「あ、そうなんですよ」と拾う。
「俺は社長の弟。といっても、ふたつしか違わないんだけどね」
そう言って副社長はにっこりと微笑んだ。
言われてみれば鼻が高いところはそっくりだけど、目元はちょっと違うかもしれない。
風見さんは切れ長の涼しげでちょっと鋭い感じのする目だけど、副社長は丸くて穏やかな目をしている。
「話を戻すけど、その社長がなかなか口うるさいものでね。社長に就任してから秘書を二名ほどクビにしているんだ」
「クビに……?」
社長に就任してからと言ったら、この半年のこと。
その間に二名もクビだなんて。