寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
恐怖のあまり声も出せず、おとなしくされるがままになっていたことも悪いと言われ、気の弱い私は言い返すこともできずに唇を噛みしめるだけだった。
そのことは未だに生々しい傷として私の心にざっくりと刻み込まれている。
私がここに警察を呼んだところで、『男を酔わせて部屋に連れ込んだのだろう』なんて言われてしまうかもしれない。
そんな目には遭いたくない。
となると、自分でこの人をなんとかしなくちゃ。
そばにしゃがみ込み、そーっと手を伸ばす。
ピンと張った人差し指でその人の肩をおそるおそるツンと突いてみたが、反応はまるでなし。
次は中指も足して二本の指で突いたが、やはり同じ。
徐々に指を増やし、最後に「あのー」と声をかけながら手の平でトントンと叩いてみる。
「……ん……」
ようやく反応らしいものが返ってきた。
「起きていただけると助かるんですが……」
もうひと押しかと思い、急いでもう一度トントンとする。
すると突然、体がゴロンと反転し仰向けへと体勢が変わった。