寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
片づけはよしとして、それがなによりも気がかりだ。こんなことになるのなら、資格欄に書かなければよかったかもしれない。
せっかく採用してもらったのに、ついうしろ向きなことを考える。
「彼女は副社長秘書でね、いろいろと教えてもらうといいよ」
田丸さんは隣で「頼りないですけどね」と微笑んだ。
そこまで言われて、やっぱり結構ですと断るわけにはいかない。ようやく雇ってもらえることになったのだ。
しかも一流企業の社長秘書としてなんて、今までの私だったら考えられない。
「ということで、これからよろしく頼むよ」
副社長がおもむろに手を差し出したので、慌てて立ち上がり私も手を出す。
「こ、こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
握られた手は大きくて温かかった。
「それじゃ田丸さん、あとはよろしく」
「承知いたしました」
立ち去って行く副社長にふたり揃って頭を下げた。