寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「では早速行きましょうか。まずは秘書室のみなさんへご紹介します」

「……はい」


こんなことなら、前もって風見さんにオリオンコミュニケーションズの中途採用試験に合格したことを報告しておけばよかった。

同じ階にある女子更衣室で荷物をロッカーにしまい、緊張と不安が加速する中、田丸さんのあとを追いかけて歩いていると彼女が振り返る。


「うちの会社は前社長が亡くなって、その息子さんである新社長と、今お会いした副社長がふたりで前社長の遺志を引き継いでいるような感じです。名字が同じで区別がしにくいこともあるので、社内的には副社長のことを“琢磨さん”とお呼びしています」

「名前で、ですか?」


取締役を下の名前で呼ぶ会社があるとは知らなかった。それも日本だけじゃなく世界にも数ヶ所拠点を置くほどの大きな会社だというのに。


「慣れないと戸惑いますよね。ですが、ご本人の意向ですので、水城さんもそれに倣ってください」


会社の規則ならば、それに従う以外にない。
「はい」と答えて田丸さんに続きエレベーターで三十階へ上がった。

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