寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「だからもう秘書はいらないと――」
「いいえ、そういうわけには参りません。それに部屋がこんな状態では、来客があってもすぐにお通しできませんから」
……え? “こんな状態”?
顔を上げ、田丸さんの陰からこっそり部屋を覗く。
「――っ!」
思わず『嘘!』と口走りそうになって、慌てて口を手で押さえた。
風見さんのマンションに初めて行ったときと似たような惨状だったのだ。
手前左側にあるデスクには資料のような山。
右側には、キャビネットから崩れ落ちたかのように本が散らばっている。まるで地震のあとみたいだ。
「辞めた秘書がひどい分類の仕方をしていたから、それをやり直しているところだ」
風見さんは腹立たしげに言った。
「ですから、そういったことをしてくださるほうがいたほうがよろしいかと」
「だが、整理整頓もろくにできないような秘書では困るぞ」