寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「それならご心配に及びません。今度の方はその分野を得意とされているそうです」
確かに得意分野ではあるけれど、ふたりもクビにされていると聞かされたあとだけに、なんとも心細い。
しかもそれが私だと知ったら、風見さんはどんな反応をするだろう。
「得意?」
風見さんが手を止めてこちらを見る気配がする。
「……いいだろう。お手並み拝見といこう」
「納得いただけでよかったです。では早速ご紹介いたします」
田丸さんが振り返り、手で前へ出るように私に促す。
私はさっきより顔を下へ向けて、彼女の横に立った。
「水城さん、ご自身でお願いします」
田丸さんが小声で私に言う。
こうなったらもうどうにもならない。逃げることも隠れることもできないのだ。
ドキドキと加速する鼓動を持て余しつつ、ゆっくりと顔を上げた。