寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「わわっ……」
慌てて避けたものの、目を覚ましたわけではなさそうだ。
瞼は固く閉じられたまま、スース―という安定した呼吸音まで聞こえる。
こうなったら無理やりにでも外へ出してしまおうかと両足を掴んで引っ張ったが、ビクともしない。
立ったまま腰に手を当てて大きく息を吐き出したところで、はたと考える。
外へ出すことができたとしてもこの寒さ、この人が凍死してしまう可能性がある。
大変なことに気がついてしまった。
そんなことになれば、私は傷害致死罪で逮捕されてしまうじゃないか。
一瞬のうちにワイドショーのキャプションが頭に浮かぶ。
“部屋に転がり込んだ男性を凍死させた疑いで、二十七歳無職の女が逮捕”
そんな映像を慌てて追い出した。
だとすれば、私に残された道はただひとつ。
この人をこのままここへ寝かせておくしかない……か。
頼りない決意を胸に、腹を決めてその場に座り込んだ。
だが、男の人をこのままにしておくことを決めたとはいえ、呑気にベッドで寝ていられるわけがない。
目を開けたら即出て行ってもらおうと、毛布を肩から被り動向を見守ることにした。