寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「こうすれば実感が持てるだろう」
そう言うなり唇が塞がれる。
驚いて風見さんの胸を押すと、その手は彼に優しく絡め取られた。
軽く啄むようなキスをされているうちに抵抗の意思は跡形もなく消えていく。
薄く開いた唇の隙間から差し込まれた風見さんの舌が熱くて、それがいっそう私の心拍数を上げた。
頭は真っ白になり、体の奥から熱が噴き出すような感覚に陥る。
いきなりキスをされたというのに、全然嫌じゃなかった。
いつの間にか彼のシャツをギュッと握り、必死になって慣れないキスに応える。
ひとしきりそうしたあと、波が静かに引いていくかのように唇が解放された。
「どうだ、これでもまだ実感がない?」
気恥ずかしさで俯いた私の顔を覗き込んだ風見さんに、私はか弱く首を横に振って答えることしかできない。
キスは初めてじゃない。
その先も、一応は知っている。
でも、私の知るキスとはまったくといっていいほど違っていた。
次元が違うといってもいいかもしれない。
私は、彼のキスに文字通り溺れたような感覚だった。
風見さんは「それならよかった」と軽く微笑み、私の唇を親指でそっと拭ってくれた。