寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
◇◇◇
デパートから帰ったあと、私は副社長室へ来ていた。
田丸さんにお茶の淹れ方やお客様への出し方、基本的な電話応対の仕方など、秘書として基本的なことを教えてもらうためだ。
朝と洋服の違う私に早速気づいた田丸さんは、私を見るなり「どうしたの?」と目を丸くした。
「実は、あのスーツでは秘書らしからぬと社長に言われまして……」
「まぁそうなの? 早速社長の洗礼を浴びたのね」
田丸さんはクスクスと笑った。
「それですぐに買いに行かされたというわけね」
「あ、はい……」
田丸さんは私がひとりでデパートに買いに行ったと思ってくれたようだ。
勘繰られたらどうしようかと思っていたが、ひとまずほっとした。
車を降りる直前まで私に熱いキスをしていた風見さんは、会社の前に着くや否やその表情をすぐに引き締め、なにごともなかったかのようにオフィスゲートを通って行った。
その切り替えの速さに私は驚くばかりだった。