世界は綺麗だった。
千景side ────────
自意識過剰だと思うが、
生徒の中に1人だけ俺を見ず
そっぽを向いている女がいた。
窓を見ていた。
いや、正確に言うと
窓の外の何かを愛おしそうに見つめていた。
次の瞬間、女が笑った。
この世のものとは思えないほど美しかった。
その女の名前は、遠峰律。
他の先生によると、
この学年で毎回、成績順位が1番の秀才らしい。
遠峰を見ると、風に揺られて髪が靡いている。
そんな姿でさえも、艶めかしく感じてしまう。
胸元まで伸びる黒くてさらさらな髪に横流しにした前髪。
ぱっちり二重で大きい瞳。
潤っていて紅みのある柔らかそうな唇。
吸い付きたくなるような白い肌。
シュッとした輪郭。
遠くから見てもわかる華奢でスタイルのいい身体。
身長は160cmくらいだな。
胸は大きい方だが、下品じゃない。
周りの女子達とは違い、
年齢の割にはすごく落ち着いていて
大人っぽさと品、気高さを感じさせる。
初めてだった。
女をあれほどまでに綺麗だと思い、同時に欲したのは。
単純に欲情してしまった。
自分で言うのも、なんだが
俺は、人生で今まで女に不自由したことがない。
だか、美しいと思った女は17歳で、7歳も年下。
そのうえ、自分の生徒だ。
だか、どうしても欲しい。
俺は、数多くの女を抱いてきた。
遠峰も俺に惚れさせて、その1人にしたいと思った。
俺は最低な男だから。
とりあえず、
特に用はないが放課後残って手伝えと言った。
すると遠峰律が、驚いた様子でこちらを向いた。
目があった時、一瞬すごく嫌そうな顔をしたが、
すぐにわかりましたと言った。
ヒソヒソ
「なんで遠峰さんが?」
「なんか、いろんな男子としてるって噂知らない?」
「だから、遠峰さん先生にも色目使ったんじゃない?」
「うっわー、最悪じゃん」
「茉莉ちゃんの彼氏にもちょっかい出したらしいよ~」
そんな声が聞こえて来た。
再び遠峰に目を向けると、
くだらないと言いたげに窓の外に視線をずらした。
正直、興味が湧いた。そして、苛めたくなった。