世界は綺麗だった。
律side ────────
店の更衣室で、店に出る準備をしている時だった。
ない。どうして。
自分でも焦ってるのがわかる。
鞄に入れておいたはずの手帳と名刺がない。
いつもは、店に出る前に
お客様の情報の入った手帳を読んでから出る。
もしかして、落としたとか?
だとしたらどこで…
学校だったらどうしよう。
とりあえず、動揺を隠して店に出よう。
手帳と名刺は明日学校で探す。
…
「雅ちゃん、指名入ったよー。新規の方っぽい」
お客様の相手をしていた矢先に、
黒子にそう呼びかけられた。
「えぇ~、雅ちゃんもう言っちゃうの~。まだここに居てよぉ~」
『すみませんっ、後で埋め合わせしますから♪』
「仕方ないなぁ~~、約束だぞ~」
『はいっ♪約束です♪』
新規?誰だろう。
まぁ、誰にしろ笑顔を振りまくだけなんだけど。
『お待たせ…し、ました』
なんで、ここにいるの?
一瞬にして笑顔が引きつったのと、
顔が青ざめたのが分かった。
だって、担任の先生が目の前で座っているから。
「へぇ、君がここのNo.1雅ちゃんか。まぁ、座れよ」
そう言って私の手帳と名刺をチラつかせる。
どうして私のを持ってるの。
やっぱり学校で落としたんだ、と気付いた。
そして、何より学校とは全く違う態度だ。
でも、私のやるとこに変わりはない。
『はいっ♪雅と申します♪』
「ここで働きはじめて何年?」
なんでそんなことを聞いてくるのか。
悪質な嫌がらせにしか聞こえない。
『んー、忘れちゃいました~♪それより、千景さんのこと知りたいなぁ~』
「そ、じゃあ俺の家きてよ、今日。明日土曜日だし。とまるよな?」
『今日は…予定が入ってしまっててごめ「今すぐ上がって来て、車で待ってるから」
私が断る前に釘を刺してきた。
しかも、今すぐなんて。
でも、仕方ない。
このことが学校にバレたら大変なことになる。