【3/9】
「……とりあえず、おいで。」
相変わらず困った顔だけど、両腕を広げて 私を呼ぶ。
その声は相変わらず優しくて、余計に涙が出る。
「ねぇ、あんまり目は擦らない。」
一歩も動かない私を見兼ねて、先生の方から近付いて 私の手首を掴む。
背中を丸めて、私の顔を覗く。
「酷い顔してる。」
そう笑った先生。
「……うるさい。」
先生はハンカチで私の涙を拭いてくれる。
「まず、言いたいことは」
「あっ、返事は求めてないです!」
喋り出した先生に言葉を重ねる。
そして、"本当にただ伝えたかっただけなんです" と言葉を付け足す。
「ちゃんと話は最後まで聞く。
言い逃げはずるいよ、俺の話も聞いて?」
そう言われると頷くしかない。