【3/9】
卒業証書授与が終わると、校長先生からの送辞、御来賓の方からの送辞、在校生からの送辞。
私たち、卒業生からの答辞。
それら全てをこなし、ついに卒業生退場。
退場する卒業生を彩るのは尊厳ある音楽とすすり泣く声。
講堂を出た私の目に飛び込んできたのは 泣きじゃくっている女子生徒に胸を貸してあげている先生の姿。
……先生は女性の扱いをよく分かっている人。
泣いている子に胸を貸すくらい、平気な顔でできてしまう人。
そんなことは もう知っている。
それでも 先生の胸で泣いている子のことを羨ましく思ってしまう。
私も泣いていたなら、そうしてもらえた?
なんてことを考えてしまう。
ただの一生徒にしては傲慢だな。
醜いよ。
こんな私は好きになってもらえるわけがない。
そんなことはもう分かってるから、せめて最後まで好きでいさせて。
どうか私の想いを受け止めて。
「伊原〜、教室戻れよ〜。」
という先生の声。
頷くことしかできなかった。
いざ、話しかけられるとこのザマだ。
それでも、最後に話がしたい。