カフェの人々


 トイレに近い席で飲むコーヒーはなんとなくトイレ臭い。

「あ、翔太?俺俺、拓也。この前の合コンで知り合ったナースだけどさぁ」

 アイツは合コンなんかしてやがる。

 畜生。

 アイツだけ人生を楽しみやがって。

 俺をこんなにしたのはアイツなのに。



 雨の湿気が店の中まで入ってくる。

 なんだか肌がべたついて気持ち悪い。

 そういえばアイツに雨の日いじめられたことがあった。

 濁った水溜まりに膝をつかされ、そのまま犬のように這いつくばって泥水を呑まされた。

 その時の味がフラッシュバックする。

 急いでコーヒーを口に含むと泥水の味がして吐き出しそうになる。


 畜生。


「で、ナースと二人で飲みに行ったんだけどさぁ」

 思わずアイツを睨みつける。

 でも実際にはチラ見しただけだが。

 謝れ、僕に謝れ、あの時のことを全部謝れ。

 擦りむいた膝から流れる血が泥水に混じる。

 土下座しろ、僕に土下座しろ、土下座して謝れ。

 アイツの目の前に仁王立ちし、そう叫ぶところを想像する。

 思うだけで僕の体は椅子に縛りつけられたかのように動かない。

 手に持つスマホが小刻みに震えている。




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