カフェの人々
夫
私はいわゆる人生の成功者だ。
いや、だった。
二十代で設立した事業は最初こそ小舟が荒波の海を渡るようだったが、最後は穏やかな大海原をゆっくりと進む絶対に沈まない豪華客船になっていた。
私は何もかも手に入れた。
金も名誉も若い妻も、そして妻には内緒だか孫でもおかしくないような若い愛人たちも。
あの日までは。
まさか自分が振り込め詐欺に引っかかるとは夢にも思っていなかった。
ニュースを見るたびに鼻で笑っていた。
そんな手口に引っかかるバカな老いぼれめが、と。