カフェの人々
謝礼をするから社債の購入費用を立て替えて欲しいなど、普段の私だったら絶対に了承しなかった。
だがあの時は少し冷静さが欠けてしまっていたのだ。
妻が愛人の一人の名前を口にしたものだから。
耳の遠くなった私の代わりに電話を受ける妻がふいに言ったのだ。
「メグって女知ってるかおまえ」
愛人の一人や二人、妻には黙らせとけと思われるかも知れないが、私の妻は妻でもあったが私の女王様でもあった。
さすがに私の立場上、人目のつくところでは献身的な妻を演じているが、二人きりの時は私を心ゆくまでなじり倒してくれる。
私の愛人たちはみな私の性癖を知らない普通の女たちだ。
いつその事が妻にバレるかと怯え、バレた時に妻から与えられる罰のことを想像すると、私は今までに感じたことのない恍惚感に包まれた。