カフェの人々
約五十年かけて作りあげた功績のほとんどを私は失った。
妻が愛人の名前を口にした瞬間、導火線に着いた火が一瞬で頭に届くように私は甘美な妄想で砕けてしまった。
私の性癖が邪魔しただけではないと自分自身を慰めもしたが、後悔してもこればかりはしきれない。
警察はなんの役にも立たなかった。
愛人もすべて失った。
愛人の一人だったメグの行方はまったく分からない。
私を恍惚とさせる妄想は失ったが妻は残った。
それだけが救いだった。
今の私には妻しかいない。
こんな私を見捨てずにいてくれる妻は女王様でもあったが同時に私の女神でもある。