カフェの人々
今まで加害者である男を憎んだことはなかった。
路上を走っていた僕も悪かったし、事故のあと何度も家に来て頭を下げた男は誠実な人間に見えた。
あれからまだ二年も経っていない。
なのに男は僕の顔を忘れていた。
まるであの事故のことも忘れてしまったかのように。
男は周りの客の迷惑も考えず電話をしながら笑っている。
その軽薄そうな姿は僕の家の玄関先で頭を下げた同じ男とは思えなかった。
男に一生事故のことを後悔して生きて欲しいなどと思っていない。
そりゃ嬉しいこともあれば笑いもするだろう。
でも。
でも無性に腹が立った。