カフェの人々
ふとあの時の若い運転士の白い横顔を思い出した。
彼は今もあの路線を走っていたりするのだろうか。
一人前の運転士になっただろうか。
年間に五〜六百件はある電車の人身事故だ、きっと今は飛び込みの一つや二つ動じない逞しい男になっているはずだ。
名前も知らない男だがあの時お互い新人だったいうことで僕のなかで連帯感というか親近感とういかそんなものが勝手に湧いていた。
霧のようだった雨が本格的な雨になってきた。
ひどくならないうちに家に帰ったほうがいいかも知れない。
僕は席を立った。
そのとき自分の肘が立てかけた荷物にあたり釣り道具が床に倒れる。
倒れるとき近くのテーブルにぶつかった。
「す、すみません」