カフェの人々
座っている女性に僕はあやまる。
コーヒーは女性の手の中で守られたがトレイにのった食べかけのクロワッサンは皿と一緒に床に落ちた。
幸い皿はプラスチック製で割れなかったが派手な音を立て他の客の注目を浴びる。
恐縮する僕を女性は「大丈夫ですから」と繰り返すが、そんなわけにはいかず新しいクロワッサンを注文した。
「逆に悪い感じだわ」
新しい皿を受け取りながら女性は言った。
その顔をどこかで見たことがあると思った。
自分でも気づかないうちに女性を必要以上に見入ってしまったようだ。
彼女が怪訝な顔をしたので僕は慌てて「じゃこれで、ホントすみませんでした」とその場を去ろうとした。
「待って」
後ろから呼び止められる。