カフェの人々


「その女はね夫に愛人が何人もいることを知っていたの。でもね愛人ぐらいなんとも思わなかった。初めから女は年老いた夫なんか愛してなかったから」

 なんだなんだそういう系の話か、あんまり得意じゃないな、と僕は心の中でため息をつく。

「金のために結婚したってことですか?」

「それ以外何があるっていうのよ」

 はい、すみません、となぜか謝ってしまう。

「夫の資産は相当なものだったの。だから女は気持ち悪いマゾヒストの夫の相手をしてやったわ。それなのに、夫は女に内緒で遺言を残していたの、自分が死んだあと愛人たちにも遺産がいくように。総資産六億円のうち妻の女に残るのはその半分の三億円に減っていたの」

 六億とかマゾとかいきなりすごい内容がでてきたな。

「その女の人はもしかしてそのエムの夫を殺したとか?」

「あなた馬鹿ね、そんなことしたらすぐに妻が疑われて警察に捕まるに決まってるじゃない」

 自分がその警察だと言うと今の何倍も馬鹿にされそうだ。



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