きっと、ずっと、恋だった。
と、振り返った前の席の秋樹。
「おはよ」
周りに聞こえないように小さな声でそんなこと言うから、さっきまで秋樹に会いたくなかったのに心の奥がふわふわしてきてしまうの、ずるい。
おはよう、を「う」まで言わない、少し砕けた挨拶が。
眉を下げて、目を細めて笑う、その優しい顔が。
私のこと気にしてくれたってことが。
こんなに嬉しくなってしまうのは、惚れた弱みだ。
「…おはよう」
「休みかと思った」
「ただの寝坊〜」
そっか、よかった、って笑って前を向いてしまう秋樹。
その背中に、急に寂しくなる。
そっか、もう、秋樹が近くにいるのもあと2日だけなんだ。
黒板の横の「あと2日」のパネル。
そして窓から舞い込む春の風。
それにどうしようもなく寂しくなった。