きっと、ずっと、恋だった。


「…コウってあんな表情できるんだね。
いつもはもっとこう、アホみたいな感じなのに」

「はは、確かに。
柊香の前では特別なんだろ」




好きな人の前では、特別。


秋樹もいつか、私の知らない東京の女の子に、見たことないくらい優しい表情を見せるんだろうか。


それを私は、横顔で見つめて、いいなぁって涙を流すんだろうか。


…そもそも、横顔ですら見られないのかもしれないね。





「…芹奈も、」

「んー?」

「芹奈も、彼氏の前では違う表情するの?」

「…どうだろうね、そうなんじゃない?」

「ふーん…」

「なに…?」






「見せてよ、どんな表情するの?」






ゆっくり振り返って、近付いてくる秋樹に後ずさる。


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