きっと、ずっと、恋だった。




なんで、そんな、寂しそうな顔するの。


なんで、こんなにドキドキさせるの。


なんで、なんで、私のことなんとも思ってないくせに。


遠くに、行っちゃうくせに。





「っ……」





近付いた、瞬間。



秋樹の匂いがしたから。

秋樹の瞳が泣いてしまいそうに揺れていたから。

触れたら壊れて消えてしまうような気がしたから。



だからずっと、私は我慢してたのに。



そのままでいたいって、困らせたくないって。

そういう私の努力を、こんなにも簡単に壊そうとするなんてずるい。




頬を伝ったのが涙だって、気付いたのは振り返った秋樹が驚いた顔をしてたから。




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