きっと、ずっと、恋だった。




「卒業生、退場」




吹奏楽部の音楽に見送られ、さっき歩いた道を戻る。

入場の時は笑っていたみんなも、今度は泣いている人が多い。


教室に戻ったら、最後のホームルームだ。


本当に本当に、最後なんだ。





「…芹奈、こっち向いて」



それぞれ教室に戻っていると、話しかけてきたのは秋樹。



「え…」



ーーカシャ




急にスマホを向けられて、シャッター音がした時にはもう遅い。




「ちょ、撮った!?」

「撮った」

「やだやだ!泣いたから目赤いから消して!!」

「はは、やだ」



いたずらっぽく笑うから、怒ったはずなのに許しちゃうじゃないか。

こんな意地悪してくれるのも嬉しいって、思っちゃうじゃないか。



「…ずるいなぁ」



「あとさ、芹奈」


「うん?」




みんなが喋りながら歩いている、ざわざわした廊下のまんなか。


少し真剣な声で、秋樹が言った。




「俺、賞とったよ」



「…え!」


「今日、サイトで発表されるらしい」


「え、本当!?すごい!」

「これ、まだ先生にも言ってないから」

「え…」


「芹奈に最初に言おうと思って」



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