影喰い
彼は云う。
「この村自体に何か“いわく”があるわけじゃあねぇんだ」
と、手に持つ懐中電灯を道すがらの家屋に当てるが、関係ないと振り払うように再び道の先を照らし直す。
パキッとまた足元では枝が折れた。
「じゃあ、肝試しって言うより度胸試しだね??」
「まぁまぁまぁ、そう焦るなって!この村自体にはって言ったただろ?」
何処かもったいぶるように、私の結論を否定したかと思えば、彼は小走りに駆ける。
今日の発案者だけあって、怖いと言う感情よりも嬉々としている感情の方が強いようにも見受けられた。
暗闇でも彼がにっと笑ったのが気配でわかった。
「本題はこーこ!!」
と、パッと懐中電灯を当てる。
ぼんやりとした光の中には瓦だけが照らし出される。
それは小さな光だけでは全貌は分からないけれど、先まで通ってきた道にあった小さな家屋とは比べ物にならないくらいの屋敷なのだろう。と思わせる程の門の一部だと推測した。
「……ここに、出るんですよ」