影喰い
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ぎぃ、と床が軋む音がした。
家と言えども廃墟である為に当然ながら靴で侵入を試みていた。
闇に飲見込まれたように暗い屋敷はそこそこに広いようで、懐中電灯に照らされた廊下はまだまだ奥まで続いているようだった。
ゆっくりと皆で歩いているからか、床の軋みが妙に気になって仕方ない。
不意に前を歩いていた友人が振り返り、私の腕を掴んだ。
「織、織、手繋ご?」
「うん。……怖い?」
「そりゃあ怖いって。織って案外こういうの平気?」
「う~~ん、今のところは」
とはいえ、夏だと言うのに何となく肌に触れる空気が冷たいような気がするのは、少なからず恐怖感を覚えているからなのだろうか。
それを彼女も感じとった為に、先まで明るくしていたにも関わらず今更ながらに怖がっているのかもしれない。
「女子が怖がってるのってなんかいいよな〜〜」
「何それ。って言うかこっちにカメラ向けないでよね。ね?織」
これまた前を歩いていた男子が振り返る。手にはカメラを携えていて、レンズはしっかりと此方を向いていた。
確かに撮られるのはいい気なんてしないので、空いている手でそのレンズを覆ってやる。
「ほんとだよ。何で撮ってるの?」
「わっ?待て待てレンズ汚れる」
よほどカメラを大事にしているのかすぐさまに私の手を払いのけて、カメラを下に向けた。
「何か映ったら面白いかなーって」
なんて事を言いながら、彼はレンズをハンカチで拭いていた。