石田先生、天使になる⁉︎
「川村くん、これは俗に言う天使と悪魔なわけだね?安西さんの良い部分と悪い部分が戦っているわけだ」
「そうなんです‼︎あいつは僕たちの敵なんです‼︎」
「それならここは僕に任せたまえ」
先生が自信たっぷりに歩み出る。
「なんなのオッさん⁉︎新入りは引っ込んでなさい‼︎どれだけ説得しても無駄。もう憎くて憎くて仕方ないんだから。特に女はね、恨みは忘れられないの。さぁ、早く刺し殺しちゃって‼︎」
「刺しちゃダメだ‼︎」
「許せるわけがないじゃない。あなたって人が居るのに、次から次へと女に手を出して。働きもしない、挙句にDVだなんて、こんな男、刺したところで罰は当たらないわ‼︎」
「ダメだ‼︎刺しちゃダメだ‼︎」
いつになく真剣な石田先生だが、ここは悪魔の方が1枚も2枚も上手だ。
安西さんは今にも突っ込んでいきそう。もし刺してしまえば、罰どころか地獄行きが決定してしまう。
今回ばかりは、いくら先生でもダメか_。
「さぁ、一思いにブスっと‼︎」
「一思いにブスっとじゃダメだ‼︎」
「だからムダな説得はやめ__」
「もっと苦しめて殺さなきゃ‼︎」
「えっ?」
「はぁ⁇」
「んっ?」
3人が同時に声を上げた。
説明しますと、「えっ?」が僕です。いつも想定外の先生だけど、この時ばかりは驚いたわけで、「はぁ⁇」と見事に素っ頓狂な声でビックリしていたのは悪魔。いつも得意げな悪魔の、あんな素の顔は初めて見た。
そして自分の中の悪魔にそそのかされ、止めるはずの天使が実はもっとタチの悪い悪魔だったと気づいた安西さんは、自我を疑っておろおろしており__。
「そんなに苦しめられて一思いじゃ、割り勘負けもいいところ。拷問にかけてから鳴門海峡に投げ捨てれば犯行もバレないから」
そう言って、天使は悪魔の微笑みを浮かべました。