石田先生、天使になる⁉︎
なにやら男の__オッさんの笑い声が聞こえる。
僕はとにかく急いだ。
だって、あの閻魔大王から直々に呼び出されたのだ。
それは、僕たち天使にとって、とても特別な意味がある。
新米エンジェルとして天使歴2年の僕が、その大役を仰せつかったのは、とても名誉なことだ。
でもそれより、閻魔大王様を怒らせてはいけない。
怒らせたら最後、並んでいる魂たちが木っ端微塵になるだろう。
「閻魔大王様、お待たせいたしました‼︎」
「遅い‼︎」
ギロりと、その充血した目で睨まれた。
それだけで失禁してしまいそうで、あんな目で睨まれたら誰でも震え上がるに__。
「えっ⁉︎これ、リアルヒゲ?コスじゃないのー?」
な、な、なんと‼︎おっさんが閻魔様のヒゲを引っ張ってるじゃないか⁉︎
「ちょっと‼︎や、やめて下さい‼︎」
僕は慌てて止めに入る。
あの閻魔様のヒゲを思いっきり引っ張るなんて、天使になって初めて遭遇する、不届きもの。こんな奴は放っておいてここは速やかに、任務を__。
「だから早く連れていけ」
「えっ⁉︎」
「えっ⁉︎じゃない!こいつだよ、こ・い・つ‼︎」
閻魔様に呆れた顔でこいつ呼ばわりされたオッさんは、今度は着ている白装束にケチをつけ始めている。
いや待て。
そんな馬鹿な。
そんな馬鹿な話ってあるのか?
僕に与えられた光栄なる任務とは__素晴らしい天使になれる逸材を迎えにきた。なれそうでなれない、その絶対的な条件がある。まさか__あのオッさんが?
「そのまさかだ。我も信じられなかったからな」
「そんな__」
1度も、ウソをついたことがないだなんて__。