石田先生、天使になる⁉︎
「じゃ、その鬼ヶ島名物、コワモテプリン1つ」
かなりの収益を上げた石田先生と私は、島のカフェに入った。
ふふっ、どうやら油断しているよう。ところが、このカフェこそ地獄の真骨頂。とくと味わうがいいわ。
「あんま‼︎なにこのプリン、凄い甘いんですけどー」
「コワモテの鬼が作っているのに甘いってことで、自律神経を乱す効果があるわ。しかも、糖尿にもかかりやすいという、まさに地獄の食べ物」
「それでも天使飯よりは美味いよ」
「ちょ、もう食べたの?痛風になるわよ⁈」
「心配なのか、そうじゃないのか、立ち位置をはっきりさせたほうがいいと思うよ」
「うるさいわね‼︎ほら、おっそろしい飲み物が来た」
運ばれてきたのは、グツグツと煮えたぎる緑の液体。
「なにこれ?青汁?」
「今、流行りのスムージーを、寒いから温めてみた(鬼の血マージー)よ」
「体に良さそうじゃないの。え?フーフーしてくれるって?なんかメイド喫茶みたいだけど__てか、なんにも冷まってないし‼︎」
笑顔で鬼と小突きあっている。
一瞬にして鬼と打ち解け、そもそも鬼自体に恐れおののくことがない。地獄とは、ほんの僅かにでも芽生えた恐怖を刈り取るところ。今のところ、全く動じることのないこのオッさんは、やはり悪魔の有力株。
そう閻魔様に報告しよう。
「ほらもう行くわよ」
「えーっ‼︎今から劇が始まるんだって‼︎鬼退治に来た桃太郎を返り討ちにする話、聞きたーい‼︎」
「そんな子供みたいなこと言わないで。早く閻魔様のところに__」
「せ、先生‼︎」
「この地味でいて、SNSはやっているけどフォロワーさんとどう絡んでいいか分からないからリツイートばっかりして逆にウザがられている声は、川村くん?」
「いや、声でそこまで分かります?」
「どうしたのよ、こんな鬼ヶ島くんだりまで」
「それが大変なんです‼︎」