石田先生、天使になる⁉︎
「えっと、あの__その、なんていうか、あっ」
僕は恐る恐る、生まれてこのかた1度も嘘を吐いたことがない、この男に声を掛けた。
人はどんな小さな嘘でもつく生き物。
それさえもない、真っさらな心の持ち主、のはず?
「ちょっと邪魔。なに?それとも入りたいの?」
「入る?」
「いや、今ヒマだからさ、8時だよ全員集合の合唱コントやってるから。みんな白いの着てるし、あ、君はぼってりしてるからアルト。そっちのギスったおばちゃん、あんたはソプラノね。で、君は__」
「僕は天使の川村といいます」
「川村くんか。冗談はコスプレだけにしてよ。その輪っかもリアルだよね。見た感じ針金とかないけど?」
「これは本物ですから」
ソッと、頭の上の輪っかに触れる。
これは天使の証だ。とても崇高な、徳の高さによって輝きが増す。未熟な僕はまだまだだが、道に迷った時なんかは手を添えて祈ることによって__。
「熱くないな。何ワット?LEDにしたら?」
「ちょっと勝手に触らないで下さい‼︎本物ですから‼︎」
「本物って__?」
ようやく何か悟ったのか、オッさんの顔が曇った。
よくあることだ。
行き場のない彷徨った魂たち。死という現実を受け入れられないことも多い。それを正しく導くのが天使としての僕の役目でもある。だからここは優しく、且つ強く伝えなければならない。
「残念ですが、あなたは死んだんです」
「僕が__死んだ?」
愕然とするのは当たり前だ。
ここで選択を間違えると地縛霊となって成仏できない恐れがある。彼が抱えている苦悩、葛藤、拒絶を少しでも和らげ、闇の淵から救い出さなくては__。
「あ、そう。仕方ないねー」