復讐劇は苦い恋の味
至近距離には彼の端正な顔が間近にあり、戸惑いとドキドキを隠せない。

「わ、私なら大丈夫だから!」

数歩進んだところで我に返り声を上げるも、君嶋くんは足と止めることなく駐車場へと突き進んでいく。

「大丈夫じゃないでしょ? 足、痛めたんじゃないの? 無理して悪化したら大変だから……」

「でも……」

そうは言われてもこんなの、恥ずかしすぎる。

けれど君嶋くんは心配な顔で私を見据えた。

「無理して歩かれるの、俺が嫌なの。……だからおとなしく運ばれて」

“運ばれて”だなんて――。

どうしよう、また昔のことを思い出しちゃった。


あれは二学期も終盤に差し掛かった頃だった。私は学校に行くのが憂鬱になっていて、教室で過ごさないといけない授業中が一番苦痛で仕方なかった。

それでもなんとか通えていたのは、他のクラスに同じ小学校の仲が良い友達がいたからだと思う。

そんなある日のことだった。

給食を終えて昼休みに入り、当番だった私は片づけを済ませた後、友達がいる他のクラスへ行こうと廊下に出た。
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