復讐劇は苦い恋の味
そして私はこの日を境に、学校を休みがちになり、友達に『行こうよ』と誘われても行かなくなった。

そのせいで両親はケンカが絶えなくなり、そのまま離婚。私はお母さんと家を出ることになり、転校したんだ。


私を保健室まで運んだりしたら、怪我をすると言っていた彼が躊躇することなく私を軽々と抱き上げ、こうやって車まで運んでくれている。

でもそれは昔と比べて私が痩せたからだよね? 私だって気づかないくらい痩せたから……。

彼が歩を進めるたびに振動で身体は揺れる。

私の身体を支えているのは、昔よりももっと逞しくなった彼の腕。顔を上げれば、凛とした彼の顔が間近にある。


こうやって彼に抱かれているなんて、昔では考えられなかったこと。そう思うと聞かずにはいられなくなってしまった。

「ねぇ……君嶋くん」

「ん? どうしたの?」

話しかけると、彼は甘い声で返してくる。昔とは違う。……だからこそ聞きたい。

「もし、私が今より太っちゃったらどうする? ……君嶋くんより重くなっちゃっても、怪我をしたらこうしてくれる?」

聞きたいよ、今の彼の気持ちを。
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