復讐劇は苦い恋の味
朋子も遅い時間の休憩だったようで、控室でばったり出くわした。

私はロッカーの中から作ってきたお弁当を、朋子はお財布を手にし控室を後にする。

「今日は予約外の患者さんが多くて、もうみんな待たされて不満爆発しちゃってさー。宥めるのに大変だったよ」

「それはお疲れ様」

朋子の愚痴を聞きながら売店に向かうと、ひとりの男性患者が私の姿を見るとすぐに駆け寄ってきた。

「こ、こんにちは! この前はお世話になりました!!」

いきなり声を掛けられ一瞬誰だかわからず、頭の中にはハテナマークが並ぶもののすぐに思い出した。

「あ、この間の……。お加減はいかがですか?」

この人、先週ロビーで気分悪くされていて、声を掛けた人だ。

その後入院したと聞いたけれど、まだ入院中ってことは相当悪かったのかな?

でも売店に来るくらいだし、順調に回復しているのだろうか。

すると男性はニッコリ微笑んだ。

「おかげさまで明日退院予定です」

「そうなんですね、おめでとうございます」

頭を下げると、男性は照れ臭そうに頭の後ろに手を当てた。
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